-
“気”というのは現代医学でいう「自律神経」を指していて、「気が動転する」「気が乗らない」「気力がみなぎる」「気を確かに」など、心の揺れや乱れを表現する言葉としても多く使われています。
厚生労働省の研究班が、昨年12月までの1年8か月の間に、市販薬の過剰摂取により救急搬送された122人に対する疫学調査を行いました。
それによると「自傷・自殺」目的の乱用が20代までの若い女性を中心に広がっていることが示されました。(参照リンク:わが国における 市販薬乱用の実態と課題-厚生労働省)また、コロナ禍やネットの普及によって、人間関係や体調など、心身の些細な不安についてネットで調べているうちに
どんどん悪いほうへと追い詰められてしまう『サイバー心気症』といった、現代社会特有の疾患も出現してきました。 -
『病は気から』のように、健康状態がいかに心理的要素に左右されているかを示す「プラセボ(プラシーボ)効果」と呼ばれる現象があります。
プラセボとは薬効のない偽薬のことで、このプラセボを医師から痛み止めとして処方されても痛みが治まる、という心理効果からそう呼ばれています。「プラセボ効果」としては偽薬にとどまらず、高山病を誘発させた被験者に偽の酸素ボンベを吸引させると高山病の症状が和らいだ例や、転倒して背骨にひびが入りひどい痛みに悩まされていた高齢女性に、椎体形成術と称した偽の外科手術を施したところ、痛みが消えた例など、偽薬にとどまらずプラセボ効果は実証されています。
(文献:Jo Marchant 著『「病は気から」を科学する』より)*期待と条件づけ
プラセボ効果は「薬を投与された」という条件づけと、「これで良くなる」と前向きに期待を抱く気持ちを持つことによって効果を発揮することがわかっています。
仮に投与された薬が偽薬とわかっていても、効果が認められるというのですから、人間ってすごい力を秘めているのですね。 -
そうは言っても、『気の持ちよう』だけでは病と闘えないことを私たちは知っています。
しかし、たとえ治療そのものは無理でも、痛みなどの自覚症状は『気』を別の何かに向けることで
緩和することが可能であると考えられ、そのためのさまざまな取り組みが分野を超えて研究されています。仮想現実や催眠療法などを利用して、痛みに対する不快感を軽減する試みもそのひとつです。
-
*話題のマインドフルネスとは
世界のトップリーダーやアスリートが実践していることでも話題のマインドフルネス瞑想。
Mindfulnessとは、過去や未来、あるいは自分自身を悩ませる事柄から距離をとり、「思考や感情にとらわれず、今この瞬間に意識を集中する」こころのトレーニングのことです。マインドフルネス瞑想の実践では、抑うつや不安感が軽減したり、痛みを減少させるなどの効果も報告されています。
:さあ、始めてみよう!
① 背筋を伸ばして両肩を結ぶ線がまっすぐになるように座って目を閉じる
② わいてくる雑念や感情にとらわれず、呼吸をあるがままに感じる
③ 身体全体で呼吸をするように、周りの空間にも意識を広げていく
④ 瞑想を終了する(10~15分を目安に)
*こころの自然治癒力を高める
身体に持病を抱えていたり、慢性的な痛みに悩まされている、そんな状態ではこころの状態も落ち込んでしまいます。
でも「このままじゃいけない」「なんとかしなくては」と無理に自分を奮い立たせるのではなく、今この瞬間の自分自身を静かに受け入れてみる、そんな些細な体験がこころの回復を促すきっかけになるかもしれません。