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4度目となる緊急事態宣言の中、いよいよ東京五輪が開幕します。今大会では33競技、パラリンピックでは22競技が行われます。
多くの会場が無観客となりましたが、この日を目標に日々トレーニングを続けてきた選手たちが見せてくれる最高のパフォーマンスを、私たちは自宅で観戦することができます。格闘技のみならずどんなスポーツにもケガはつきものですが、顎や口腔領域を保護する装置として、マウスガード(スポーツマウスピース、マウスプロテクター)の存在を皆さんはご存知でしょうか?
オリンピック競技をテレビ観戦する際には、どんな競技でマウスガードを着用しているのか、選手の口元にも注目してみると、また違った楽しみ方ができるかもしれません。 世界最古のマウスガードは、1892年ごろロンドンの開業歯科医ウォルフ・クローゼ氏が、ボクシング選手の依頼で作製したゴム製のものが始まりだそうです。
しかし、古代ギリシャのスポーツ競技者やローマ帝国の戦士たちも、その競い合いや戦いのなかで革の紐を噛みしめていたといわれています。マウスガード誕生のずっと前から、「革を噛む」という行為が現在のマウスガードと同様の効果を得るために行なわれていたのだということがわかります。近年は義務化となっているボクシングなどの格闘技全般のほか、各競技連盟・団体によって装着推奨のルール作りも積極的に進められるようになり、安全にスポーツを楽しむ意識がより一層高まっています。
弾力性のある樹脂素材でできており、上顎の歯茎までを覆うように装着して使用する保護装置。
スポーツによって生じる歯とその周囲組織の口腔外傷を防止、または軽減するために有効。
*アスリートの口腔内を守る
ボクシングやアメリカンフットボールなどの格闘技や接触プレーの多いスポーツでの、歯牙の損傷(破折、ぐらつき、すり減り)や顎の骨折、また自らの歯で舌や口の粘膜を傷つけてしまうなどケガ防止に役立ちます。*脳しんとうの予防・軽減
タックルや打撃を受けた際、マウスガードがクッションとなって顎から頭部へ伝わる衝撃を緩和してくれることで、脳しんとうの予防・軽減につながることが期待されます。他にも、マウスガードを噛みしめることで顎の緊張度が高まり、頸部が固定されることで脳しんとうを予防できるとも考えられています。
*安定感とパフォーマンス向上
正しいマウスガードを使用することによって噛み合わせが安定し、バランス感覚や瞬発力の向上が期待されます。
またマウスガード装着でケガに対する安心感が生まれることで、リラックスした状態でプレーに集中することができ、アグレッシブなパフォーマンスにもつながります。*スポーツショップなどで売られている既製のマウスガード
比較的安価で手に入るが、適合が不十分で外れやすい、違和感・吐き気を伴う、呼吸・発音がしづらい、などの欠点も多い。*専門の歯科医師が調整したカスタムメイドのマウスガード
適合性に優れ、高品質。違和感が少なく外れにくいため、会話もスムーズにできる。
ケガの予防はもちろん、身体への安定性が高まることでパフォーマンス向上にも期待大。作製に費用と期間がかかるのが欠点。空手やキックボクシングなどの格闘技や、激しい接触を伴うラグビーやアメフトなどのスポーツは、すでにマウスガードの完全義務化や一部義務化などの対策がとられています。
そのため実際には中学や高校の部活動に多い球技(野球やサッカー、バスケットボールなど)で口腔周囲のケガが増加しています。*野球・ソフトボール・サッカー・バスケットボール・バレーボールなどではマウスガード着用が「推奨」されています。
スポーツのケガで大切な歯を失わないためにも、かかりつけの歯科医に相談して、自分に合ったマウスガードを作製してもらうことをお勧めします。
ケガの不安を軽減して、思う存分スポーツを楽しもうではありませんか!